with rise 2022 WINTER

街がキラキラと輝くホリデーシーズンはもう目の前。今年の冬はヴィンテージライクなアイテムを自分らしくミックスして、華やかだけど頑張りすぎない自然体なオシャレを楽しみたい。心躍るホリデーをいっそう盛り上げてくれるスタイルを提案します 。


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Localsonly.毎日通った商店街の銭湯白田幸市さん二子玉川商店街振興組合理事長兼サイクルショップシロタ店主お話を聞いたのはvol.06二子玉川商店街通りに建っていた、空高く伸びる煙突がシンボルである「新寿湯」。湯船は源泉の温泉浴槽以外にも電気風呂、水風呂、薬湯、サウナと種類も豊富だったそう。80年以上も地元の方に愛されていましたが、2008年に残念ながら閉業しました。用賀駅から二子玉川方面へ歩いて10分弱、天井が高い宮造り銭湯の「藤の湯」。浴場内の東屋の下には檜風呂があり、やさしい木の温もりを感じられる。地元の方はもちろん、周辺を走るランナーにも親しまれています。「二子玉川商店街振興組合理事長」であり、二子玉川商店街の「サイクルショップシロタ」の店主でもある白田幸市さんは子どもの頃、商店街の銭湯『新寿湯』に通っていたそうだ。「その頃の家には風呂がなく、夕飯を食べ終えた父や祖父から『行くぞ』と声をかけられると、着替えとバスタオルだけ抱えて行きました。石鹸や体を洗うタオルや洗面器は銭湯に預けていたので」と懐かしそうに思い出す。白田さんの言う「その頃」とは、1960年代後半。世田谷区にはまだ150軒ほどの銭湯があり、地域の人たちが自分の家の風呂のように気軽に利用していた。「浴槽は熱い湯と普通の湯の2種類。たいていの大人は普通の湯につかり、混み合っていたので、僕は空いている熱い湯に入ろうとするのですが、『アチチ!』と足を引っ込めてしまうほどの熱さ。ぬるめようと水道の栓を捻ると、『水を入れるんじゃない』と熱い湯が好きなおじいさんに叱られて。我慢して熱い湯につかっていましたよ。顔を真っ赤にしながら」と笑顔で話す。熱い湯で火照った体を冷ますのは風呂上がりの一杯だ。「フルーツ牛乳だったか、コーヒー牛乳だったか。瓶入りの冷たい飲み物をゴクゴクと飲むのも銭湯の楽しみでした」。一度、銭湯の店主がお湯を沸かす釜場を見せてくれたことがあった。「山のように積まれた薪を、次から次へと釜の中に放り込んでいました。『やってみるか?』と言われたので、『うん』とうなずいて燃え盛る炎に近づき、大きな薪を思い切り放り込みました。そんなふうに仕事を見せてもらえるのも、店とお客の距離が近い商店街ならではでしょう」と白田さん。小学5年生のとき、店舗兼住居が建て替えられると同時に浴室も新設されたので、白田さんは『新寿湯』に通わなくなった。大人になってからも行く機会はなくなり、2008年に閉店。商店街から銭湯が消えた。商店街の様相も変わってきてはいるものの、店とお客の距離は昔も今も変わらないと白田さんは話す。「顔なじみになると何かおまけしてくれたり、多少の融通はきかせてくれたり。私の店でも、『子どもの送り迎えに自転車が必要だから、どうしても今日中に直して』というお客さんがおられたら頑張って直します。そういう信頼関係は商店街の個人店だからこそ。大事にしたいです」。商店街にある心温まるふれあいは、銭湯で家族と背中を流し合っていたあの頃から今も、変わることなく続いている。「大勝庵玉電と郷土の歴史館」大塚館長より提供昔の街の顔今の街の顔SPECIALCOLUMN


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